ガイドライン2023年版続発性

日本内分泌学会雑誌(2023年99巻)に掲載された「間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版」にある「ACTH分泌低下症の診断と治療」の情報をまとめました。
診断のポイント
主な症状

易疲労感、脱力感、食欲不振や体重減少、消化器症状(悪心、嘔吐、便秘、下痢、腹痛)
血圧低下、精神障害(無気力、嗜眠、不安、性格変化)、発熱、低血糖症状、関節痛

検査所見
  • 血中コルチゾールが正常値より低い
  • 尿中遊離コルチゾールの排泄量が正常値より低い
  • 血中ACTHが高くない(10pg/ml以下のことが多いが、正常や軽度高値の場合もあり、生物活性の乏しい ACTHが分泌されている可能性もある)
  • CRH試験(100μg静注)やインスリン低血糖試験(ITT)で、ACTHとコルチゾールの反応が低いか無反応
  • 迅速ACTH試験(コートロシン® 250μg静注)では、コルチゾールの反応が低いことが多いが、ACTH-Z 試験(コートロシンZ® 500μg3日間静注)に対しては増加反応がある
除外すべき条件

ACTHの分泌を抑える薬剤を除く。特にグルココルチコイド(注射薬、内服薬、外用薬、吸入薬、点眼薬、関節内注入薬など)の使用歴を確認すること。

治療のポイント

ACTH分泌低下症の治療は、副腎皮質ホルモン(グルココルチコイド)の補充療法を中心に行われます。

  • 治療はヒドロコルチゾン(1日5〜10mg)の少量から開始し、1〜2週間ごとに様子を見ながら調整します。
  • 血中ACTH濃度は治療効果の指標にはならず、体重や自覚症状、生化学検査を基に投与量を調整します。
  • 投与は1日1〜2回で、朝に全体量の2/3、夕に1/3を投与するのが望ましいです。
  • シックデイ(病気などで体調が悪い日)には、通常の2〜3倍の量に増やし、3回に分けて服用することが推奨※1されます。
  • リスクが高い患者の緊急時にはグルココルチコイド注射が必要となることがあります。
  • 長期にわたって服用を継続する必要があるので、副作用のチェックなど経過観察が必要です。
  1. コルチゾール結合グロブリン(CBG)の影響により、ヒドロコルチゾンの摂取量を3倍にしても、そのまま血中コルチゾール値が3倍になるわけではありません。そのため、欧米のガイドラインでは2倍量が目安とされており、「1日の2倍量を一度に飲む」よりも「24時間かけて2倍にする」ことで、より効率的にコルチゾールを活用できるとされています
緊急時の対応

患者は常に「副腎不全カード」を持ち歩くことが推奨されます。このカードには、意識を失った際の連絡先や、主治医の情報、グルココルチコイド注射の必要性が記載されます。

補充療法の予後

ACTH分泌低下症の患者がステロイド補充療法を受けている場合の予後や死亡リスクについても言及されていて、特に、ヒドロコルチゾンの投与量が過剰にならないように注意することが重要と言われています。

[出典]日本内分泌学会雑誌 – 間脳下垂体機能障害と先天性腎性尿崩症および関連疾患の診療ガイドライン2023年版

引用されていた文献

Tomlinson JW, et al. Lancet 2001; 357: 425–31.
Sherlock M, et al. J Clin Endocrinol Metab 2009; 94: 4216–23.
Burman P, et al. J Clin Endocrinol Metab 2013; 98: 1466–75.
Hammarstrand C, et al. Eur J Endocrinol 2017; 177: 251–6.


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